『エンボディ』 エンボディ主宰/上村ゆかりさん
今回は新しいボディワークのご紹介です。今年銀座にオープンしたばかりのスタジオにうかがいました。
Q:とてもステキなスタジオですね。
ありがとうございます。
お越しになる方に心地よく過ごしやすい空間であって欲しいという、私のこだわりと理想を形にしました。 テーマは『自然』と『心地良さ』ですので、床はコルク材、壁には珪藻土(けいそうど)を使っています。 レッスンで使用するマットも天然ゴム素材にこだわりました。 波動スピーカーとアロマの香りの中で、リラックスしながらボディワークを楽しんで頂きたいと思っています。
Q:さて、『エンボディ』とはどんな意味ですか?
エンボディとは、英語の『embody』で、これは『具現化する、肉体に精神を宿す』という意味があります。 エンは、日本では縁や円(丸)という意味合いにも取れますし、 音の響きも良かったのと、縁で繋がるスタジオにしたいとの想いも込めて『エンボディ』という名前に決めました。
Q:どのようなボディワークなのでしょう。
自分自身で体を緩めて、体や心の疲労、脳の疲労を取る習慣をつけることで、人生を豊かに、イキイキと生きるための土台を作り、自然と笑顔になるボディワークです。
Q:なぜ『エンボディ』を立ち上げようと思ったのですか?
オリジナルブランドとして『エンボディ』立ち上げたかったのは、現代においての問題意識、自分の想いを、自分なりの感性と言葉で伝えていきたいと思ったからです。
働き盛りの方たちが自分を見失いつつある現在、疲労を取り、心と体の本当の健康を取り戻すことはとても必要であると考えています。個人が明るく元気ならば、日本の未来も明るく元気なものになるでしょう?
それと、おこがましいのですが、もうひとつは『役割』『使命』のようなものを感じたからです。
自分で癒すことの大切さ、自分の生かされている命に感謝すること、そして、自分をクリアにすることで原点—自分自身—にいつも立ち戻ることが、すべての問題解決の鍵、ヒントになるという、こうした大切なことをお伝えすることが、私の役割ではないかと感じたのです。みなさんもそれぞれ、出会いやきっかけ、想い、人生のドラマがあって現在があるのだと思いますが、私も様々なきっかけや出会いを頂いて、今に至っています。
Q:では、その「きかっけ」を教えて下さい。
キッカケは3つあります。
以前は私も、ハードなエアロビクスやウェイトトレーニングなど、外側ばかり鍛える筋肉トレーニングをずっとやっていたのですが、周りに故障者が多く、健康のためにやっているのに、なぜこんなに故障者が多いのだろう、なぜ、みんなそれを疑問に思わないのだろうと思ったことがひとつ目です。
矛盾を感じた私は、ヨガや太極拳、気功とさまざまなことを学びました。その中で『調整系』のものに出会い、今まで自分が感じていた『なぜ?』が解決したのです。それから、エアロビクスは一切やめて調整系の指導の道に入り、同時に、アロマセラピーマッサージや整体など、人に施術することを始めました。
ところが、いつも来られる方はいつも『同じ症状』で来られるのです。それで「私は本当にこの方たちのためになっているのだろうか、もしかしたら、こうして手を差し伸べることが、実は、その方が根本的に持っている治癒力を引き出せない結果になっているのではないだろうか」との疑問を持ちました。自分で改善する力、自分で治していく力は人間には必ず備わっている。ならば、それを引き出すことの方が大事なのではないか。『自己調整』をすることの大切さに気づいたのです。心と体の真の自立。そのためには、『誰かに施してもらう』のではなく、自分自身で常にメンテナンスすることがとても必要だと理解しました。
また、一時期、私はホスピスで患者さんにマッサージをさせて頂く機会を得ました。
ここで私は本当に多くのことを学びました。懸命に立ち働く医師の『結局、何もしてあげられないんだよね、最終的にはね』という言葉も胸に突き刺さりました。誰かがその方の呼吸を高めたり、必要な筋肉をつけたりすることは出来ないのです。自分の体、つまり自分の命は、自分で整え、大切に思い、守っていく。この姿勢こそが大切なのではないかと、自分なりの結論に達したのです。それが二つ目のきっかけです。
三つ目は、私の生徒さんが二人、癌で亡くなられたことです。
人のことばかり考え、自分のことは後回しにしていた方でした。彼女の訃報を知った時、私は「本当は、もっと自分を癒してあげることが先だったのではないか、自分の心の声に耳を傾けない彼女に体が反乱を起こしたのではないか」と思いました。 私は彼女を尊敬していたし、大好きだった。でも、私は何もしてあげられなかった。本当に悔しくて、悲しかった。せっかく自分の体のケアに目を向け始めた彼女に、私が心のケアも含めて出来ていれば、と考えると、今でも心苦しいのです。 だから私は、体と心の両方を考えられるスタジオを作りたいと思い、現在の形に至りました。体のケアだけでなく、心のケアの大切さにも気づかされたのです。
体は思った以上に正直です。体は、心のメッセージをいろいろな形で、例えば病気や不快な症状、慢性的な症状として表してくる。体の声を聞くことは、実は、心の声を聞くことだと、私は考えています。体と心は両輪です。両方が上手く回っていかなければ、本当の健康は保てません。
体は、心のひとつの『表現の場』なのです。
■体は『鍛える』時代から『緩める』時代へ
Q:『エンボディ』というボディワークは、ご自身のこれまでの歩みの集大成、と言うことでしょうか。
まだまだ、私自身学びの途中ですし、学びは永遠に続くものだと思っていますが、私の『価値観』の体現であることには、間違いありません。
私は、『最終的には自分がすべての指揮者なのだ』と言う意識が大切だと思っています。
自分の体と心は、育てることも変えることも、最終的には『自分』しか出来ないのです。可能性は自分の中にこそ存在していて、その可能性を引き出すのは、自分自身に他なりません。きっかけや知恵を与えて頂いたり、時には引き出すことを手伝って頂いたりしながら、人はささえ合って生きていくものですけれど、それが『依存』になってはもったいないと思います。最終的には『自分』で行うことが重要なのです。
Q:レッスンはどのように行うのですか?
毎回決まった形と言うのはありません。集まって下さった方々の状態を感じ、その時に一番あった流れに自然となっていきます。ただ、常に基本となるのは『体を緩めること』です。
Q:体を『鍛える』のではなく『緩める』のですね?
はい。現代人は体が固まっているせいで呼吸が浅くなり、キレやすかったり、我慢のきかない精神状態になっています。また、縮こまった体で生活していると精神も萎縮し、他者を思い遣る気持ちや、ストレスに対処する余裕も生まれません。
実は、体が固まると脳も固まるんですよ。固まった脳は内的なストレスを感じ難くなって、認知判断の幅も狭くなるのです。さらには、基礎代謝の乱れや姿勢の崩れにも繋がってきますし、自律神経やホルモンバランスにも影響を及ぼします。
体を緩めると、筋肉のみならず、循環器、内臓の働きもスムーズになります。副交感神経も高まってリラックスしますし、疲労が軽減しますから日常的にも動きやすくなります。また、故障や怪我をしにくい体になります。その人にあった筋肉量、体重、体型にもなります。
また、体が緩んだ状態は体と心に余裕ができるため、人に対して寛容になれますし、ストレスの許容範囲が広くなるので、無気力感や不安が軽減されます。そして、よく眠れるので睡眠時間も短くてすみます。
Q:いいこと尽くめですね。
そうですね(笑)。現在はスピード社会で、みなさん常に緊張しておられます。こうした時代だからこそ、自分と向き合い、癒していく時間がとても大切なのだと思っています。緊張して固まった体と向き合い、ひとつひとつ丁寧に感じながらほぐしていく事で、ご自分の五感と体のリズムを取り戻すことが出来ます。自分で体を緩めて、体と心と脳の疲労を取る習慣をつければ、自分で自分に力を与えられる。それこそが真の癒しになると考えています。
心は体が支えています。
体のメンテナンスのためにいらした方が、体を緩めていくに従って心のふたが開いて、いつの間にか泣きながら行っていたと言うこともあります。体を通して『自分とは何か』を探索していくと、思わぬ発見や気づきがあって、とても楽しいですよ(笑)。
Q:他のボディワークとの違いは何でしょう。
まず、「体を緩める」思想のエンボディは、「体を鍛える」というフィットネスの思想とは根本的に逆にあります。適度に体を動かすこと、鍛えることも必要ですが、ある程度、年齢を重ねていくとメンテナンスの方が大切です。
私自身、エアロビクスからトレーニングまですべて指導した経験から言える事ですが、ただでさえ、年齢と共に硬くなる体を、あえて硬くする必要はないと感じています。
では、ストレッチとはどう違うか、と言いますと、ストレッチは体の表面の筋肉を伸ばすことで、血行改善効果を計っていますが、エンボディは表面ではなく体の中を感じて緩めていきます。東洋医学的に言うと“経路”や“気”ですね。体の中からエネルギーが沸きあがって、暖かくなるように導いていきます。
動きはヨガとも似ていますし、思想も似ています。
ヨガにも体と心をつなぐという意味があり、根本思想は同じです。
ただ、たくさんの種類がありますので全部とは言えませんが、現在行われているヨガの多くは無理にポーズを完成させる傾向が強いのではないかと思います。
実際、無理をして故障者が多いのも現実です。全米ヨガライセンスを取得している私自身が常に疑問に感じていたことでした。
エンボディでは、まず関節を中心に、凝り固まった所からほぐしていくことからはじめていきます。凝り固まった体で無理にポーズをとろうとすれば、どうしても頑張ってしまい無理がくる、それが故障の原因と考えています。イメージを使い、体の表面でなく体の中を感じながら、自分との対話の中で、無理なく段階を追ってまず緩めていきます。形にとらわれず、とにかく自分の心地よさ探しをしていきます。
エンボディは、硬い筋肉よりも、柔軟性のあるしなやかな流れのいい筋肉と柔らかい体を作っていきます。柔らかい体は疲れにくい体をつくる第1歩です。体をほぐし本来の柔軟性を高め、神経圧迫を始めとする不調を身体の中から和らげていくという点では、カイロプラクティックに近い思想も含んでいます。しかし、エンボディは施術者によって行われるものではなく、自分自身の心と身体の対話から、自分で自分をメンテナンスする点で大きく違っています。
■自分と向き合い、体と心でタッグを組む
Q:レッスンはどのような流れで行うのですか?
エンボディでは、動きは説明しますが、手取り足取りの指導はしません。
人は、ひとりひとり違います。性別、年齢、骨格、柔軟性、日によって体と心のコンディションも違います。ですから、マニュアル通りの『形』を強いる事はしません。本人の『良い加減』のペースで良いのです。
また、レッスンは、より自分自身の内面の声を聞くために『目を閉じて』行います。
大切なのは『感じる力』です。
一番心地良く動けるように、それぞれ自分で感じて動いて頂きたい。目で見るのではなく、自分の体と心の声に耳を傾けて頂きたいのです。 スタジオを鏡張りにしないのも、こうした理由からです。
人はそれぞれに、ご自身の中に癒す力、治す力を持っています。その力を自分で引き出すきっかけをここで掴んで頂ければと願っています。
Q:例えばどのように行うのか、具体的に教えて下さい。
90分間、ゆっくりと体を動かしていきます。立ったまま行う時も、椅子に腰掛けたり、マットに座ったりする事もあります。
そして、呼吸法を用いて体を緩めながら、体のコアだけをしっかりとします。お腹にしっかり力を集める。いわゆる『丹田力』ですね。ここが大事です。他が緩んで中心軸だけがしっかりしている体にします。
現代人はハラが抜けて上半身が緊張していますが、昔の日本人はハラで物事を考えていたんです。日本古来の『ハラコシ文化』は素晴らしいのですよ。
Q:エンボディを通して目指すものは何でしょう。
まず『今に感謝出来る心を持つ』こと。
人生は全て「おかげさま」でなりたっています。普通に生活が送れる事、何気ない毎日が本当に幸せであることに自然と感謝出来るようになれればと思っています。
それから『完璧を求めない』こと。
生身の人間ですから、感情の起伏も体調の善し悪しもあって当然です。完璧でない自分も受け入れられるようになれたらいいな、と考えています。
そして『不安からの開放』。
人は自分とのつき合い方が分からないから悩むし、不安感を持つのだと思います。
自分と向き合う習慣をつけることで、客観的に自分自身の状態を掴めるようになれば、もっと上手に自分とつき合っていけると思います。
さらには『真の自立』ですね。
自分が全ての発生源である、という意識の高さが、自分への信頼と自信に跳ね返ってくるのだと思います。自分が元気であれば人を応援する余裕も出てきます。
最後に『社会貢献』が出来る生き方でしょうか。
難しい事ではありません。自分の体は自分で守ると言う各自の自覚が、次世代の医療費削減、ひいては社会貢献に繋がると思います。
Q:すばらしいですね。
いえいえ。私自身、かつては極度の依存症だったんですよ!
過食症で買い物症候群だったし、エステや骨盤矯正など、あらゆるものにお金をかけていました。『他から自分を変えてもらおう』と思っていたんです。でも、自分のモヤモヤは晴れないわけですね。
結局、環境が変わっても、何が変わっても、自分自身が変わらなければどうにもならない。そこに行き当たったのです。自分を自分で変えなければ何も変わらない事を実感しました。自分を客観的に見て、心静かに自分と向き合う。そうすると、例えば、お酒を飲みたくなっても無意識で飲んでしまうのではなく、なぜ今飲みたいのかをきちんと考えて理由を知って、それでも飲みたければ飲む。そして、そんな自分も受け入れてあげられるようになりました。
前は、もう罪悪感(笑)。「はぁ〜、またやったぁ」って。何がそうした行動を起こさせているか深く考えていなかったので、ずっとその繰り返しでした。毎晩3〜4時まで飲んで、それで肝臓も壊して、体が痒くなって、それでもお酒をやめられなかった。
20代は淋しさを食べる事とお酒で紛らわせていたんです。それすら、無意識でしたけれどね。
意識する事で変わりました。自分で一回受けて止めて、それでもやりたいかどうか考えてからやる。そうすると罪悪感を持たなくなりました。 私は自分を責めるクセがあるのです。自爆するタイプと言いますか(笑)自分で自分を責めて被害者意識を持ってしまっていたのです。 そのパターンが分かった時「なぁんだ、これをずっとやっていたんだ」って思いました。このクセが全て抜けたわけではありませんが、パターンが分かってからは「あ、また出てきた」と客観視出来るようになり、楽になりました。
こうした考えに至ったのは、自分で体をクリアにするようになってからです。
体をクリアにすると自分の中から湧き上がってくるものがある。今までふたをしていたもの、出たくないもの、それが何かをもっと知りたくなってくるのです。
ただ体を動かす、体を鍛える形で体と向き合っていた時期と、体と心の密着感を知って体を動かすようになってからは全く違います。『体と心』はつながり、無意識の感情が体にたまっていることを知って体を動かしていくと、いらないものがどんどん出てくるのです。だから、レッスン中に泣いてしまってもいいので、どんどん出していく事が大事ですし、そうすると楽になりますよ。
Q:体で心のふたをあけていく作業でしょうか。
そうそう。でも、その後のフォローが大切なのです。その後のご自身がどうなのか。出してスッキリの方もいらっしゃるけれど、溢れるものを自分だけではどうにも出来ない時もあると思います。そうした時、もし、私に話しをしてこられたら、私は聞くだけしか出来ないですけれども、そういう間口はいつも広げていたいと思っています。
Q:レッスンで一番大切にしていることは何でしょうか。
自分自身は自然体の笑顔を大切にしています。そして、スタジオにいらっしゃるみなさまも笑顔で帰って下さるといいな、と思っています。心も体も緩んだ時の、何も考えない笑顔はとってもステキだと私は思っています。
Q:今後の目標は?
仕事的には予約の取れないスタジオにしたいです。しかも「口コミ」だけで(笑)。そして、ひとりでも多くの方が、人生の最後まで、心も体も元気で、『ピンピンコロリ』でいけるお手伝いをさせて頂きたく思っています。
個人的には『一番笑顔のステキなおばあさん』になりたいですね(笑)。
今日はどうもありがとうございました。
●reviveより
都会の一角に自分と向き合える空間を持つ事は、とても贅沢ではないだろうか。
しかも、そこにはステキなインテリアと、経験と理論に裏打ちされた素晴らしいメソッドがあり、
人を包み込むような笑顔で穏やかに待っていてくれる人がいる。
「鍛える」から「緩める」時代の始まりを、歴史と伝統息づくオシャレな街、
銀座で是非体験して欲しい。
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