英会話を習い始めた頃、
＜aloneアローン＞と＜lonelyロンリー＞の違いが分からなかった。
どちらも「ひとり」なんだけど、ロンリーの方は孤独だったり寂しかったりするらしい。
日本語でも「ひとり」と「孤独」をイコールにしがちだから混同していたのかな。
でも、独居老人が死んだら「孤独死」と言われるのは、なんかヘン。
みとる人が周囲に居なくて、「ひとり」で死んだってだけのことでしょ？
なんでそれを「孤独」と呼ぶの？
「ひとり」が「孤独」とは限らないよね。

フィンランドを旅行していた時、現地の男性・ニコと恋に落ちた。
ニコは、母国語以外にスウェーデン語とロシア語と英語を話す。
もちろんケイとの会話は英語。
出会って3日目で恋に落ち、4日間ラブラブで過ごし、
1週間の滞在を終えて帰国したケイを追って、3ヶ月後ニコが日本にやって来た。
んー、まあ好きではあるが…、森と湖とサウナという魅力的な背景のもと
幾分情熱的にはなっていたが、日本での今の状況をすべて放り出して
ゼロから異国で生き直す、というほどのパッションはない…というのが本国でのケイの本音。
すぐにもフィンランドで一緒に暮らそうと、いまだ情熱を持続しているニコは迫る。
「えーっと、ちょっと待って」と、ケイは慌てて態勢を整える。
「まず、日本での仕事の方が大事だとか、親や友達と離れて異国へは行きたくない、
　というようなことは私は思ってないのよね。だけど…」
「オーケー。そうか。ありがとう。愛してるよ。君も愛してる？」
「ん？　ああ、まあ、そうなんだけど、えっとね…」
「君もボクを愛してくれるんだね。ボクは君を永遠に愛するよ」
こう何度も「愛」を連発されたら、おなかいっぱい、もう見たくもない、
あんなに欲しくて悶々としたこともある「愛」ってやつが、今はうっとおしくてたまらない。
私にかまわないで！　暑苦しいからひとりにして！　って気分。

「永遠に愛するなんてこと、何でそんなに確信をもって言えるの？
　愛ってfeelingでしょ？気持ちは変わるものよ。
　どんなに今そうであっても、時間や距離が
　次第に気持ちを変えていくってことあるじゃない。
　それは仕方のないことでしょ」
「いいや、ボクの愛は絶対に永遠に変わらない」
「絶対に、って、何でよ！？」
「愛はfeelingじゃない。愛はwillだ。」

Feelingを「気持ち」、willを「意志」とケイは直訳したけど、
ニコが同じ意味で使ったのかどうかは分からない。
二人の「愛」の定義が違っていたように、言葉のピックアップも
お互いに間違っていたのかもしれない。

「愛がwillで永遠かどうか、時間と距離をとってゆっくり確認させてもらおうじゃないの」
と提案すると、ニコは自信満々でフィンランドに引き揚げて行った。
が、その後、何年も連絡が無い。
「えーっと、willはどうなったの？」なぁんて意地悪は言わない。
willなんかに縛られてないで、feelingで生きようよ、ね！