男子をライバル視しなくなったのはいつからだろう。
中学になると、まず体育の授業が分かれるし、家庭科と技術とで分けられたりしているうちに、
男と女は生きる土俵が違うのだと思い始め、
役割によっては女子がサブであることにも慣らされていったような気がする。
どのクラスも学級委員長が男子で副委員長が女子だった。
高校になると学力の違いが如実に表れた。
「チョー賢い」と「どアホ」が男子、中間層が女子だったが、理数系の平均点は男子が圧倒的に高かった。
大学では男女間で競うようなテーマもなかったが、
社会に出てみると、なるほど男子の方が確かに昇進が早い。
でも、憤るほどのこともなく、どうでもいいやと思う。
そもそもナミコと同じ会社にしか入れないようなレベルの男子なのだ。
ちっちゃーい世界で、せめてものプライドを維持させといてあげよう。
「課長補佐」と「副課長」と「課長代理」のどれが一番えらいのか、
どうせ外部の人間にはさっぱりわからないのだし…。
小学1年生のナミコは作文と絵画が得意だった。
担任の先生もその能力を高く評価していて、いつもクラス代表で
地域の作文コンクールや絵画展に出展してもらっていた。
ところが2年生になってタカシが転校してくると、
今度はタカシの絵や作文がことごとく脚光を浴びるようになった。
しかし、ナミコは全然なんとも思っていなかった。
王座を奪われたことに気づいてはいたが、悔しいとも、
タカシさえいなければ…とも考えもしなかった。
感情の発達が未熟だったのか、そういう事態に
どういう感情を持つものなのか分からなかった。
でも何となく「つまんない」ような不思議な感じがしていた。
ある日、タカシはコンクールで入賞した作文を、クラスのみんなの前で朗読することになった。
どんなに素晴らしい文章なのか聞いてやろうじゃないか、とみんな耳をそばだてた。
タイトルは「僕は1番」だった。
転校してきた学校でも、勉強や体育が1番になれたこと、
絵や作文がいつもほめられっぱなしということが、のびのびめいっぱいうたいあげてあった。
おめでたい奴だなあ、とそろそろみんなうんざりしかけていた。
しかし、オチが見事だった。
<「天狗になるなよ」父からげんこつをもらった。>
レベルが違うと思った。
「何であなたは嫉妬しないの?」
オトコは物足りなそうに尋ねるが、
「圧倒的に自分の方が幸せ」か「圧倒的に相手にかなわない」と思える場合、
人は嫉妬心を持たないものだ。
ナミコはいまだに誰にも嫉妬したことがない。
「雨ニモマケズ」著者:宮沢賢治
●最終話:妄想は賢い女の娯楽道
●第二十七話:秘められた人生計画
●第二十六話:若いだけで素晴らしい
●第二十五話:堕ちてくオトコを助けない
●第二十四話:未来は思い出よりも美しい
●第二十三話:終着点を越えて
●第二十二話:品行方正の言い訳
●第二十一話:そういう人になりたい
●第二十話:本当のお姫さま
●第十九話:昔あったかもしれない楽園
●第十八話:愛を仕分ける年末
●第十七話:ステキな小学生を探せ!
●第十六話:初恋はエクスプレス
●第十五話:帰れない観光客
●第十四話:熟女も踊る
●第十三話:あと出しジャンケン
●第十二話:家電ヒストリー
●第十一話:ご長寿アニマルのたくらみ
●第十話:食べるならとことん
●第九話:異邦人は直訳で会話する
●第八話:こだわらない性格
●第七話:白黒つけたい!
●第六話:他力本願はソレだけ
●第五話:冬眠する蝶
●第四話:イタい女
●第三話:サバイバルのことではなく
●第二話:チョイ役の冒険者
●第一話:レモン・ロマン・やせガマン
Storyteller : 高倉アリス
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●第二十六話:若いだけで素晴らしい
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●第一話:レモン・ロマン・やせガマン
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